脳梗塞による後遺症(半身不随)に対する果敢な挑戦=CIセラピー

2000年6月、アラバマ大学=UAB(University of Alabama)のEdward Taub教授がJournal Stroke紙に発表した論文は、リハビリテーション学会を稲妻のような衝撃で貫き、世界の医学界の常識を覆したと言われる。
Tuab 博士によれば「いくつかの脳細胞は卒中を起こしたときに死滅(some cells die after stroke )するが,さらに多くの細胞が卒中によるショック状態のまま残っている(but many more are left in a stage of shock)とのことである。
そしてこれらの脳細胞の回路(circuitry)は、教授のグループが開発した画期的なリハビリの手法によって巧みに再組織化(reorganize) され,たとえ発症が数年前に起こった場合でも、ほんの2~3週間の訓練で患者の麻痺した手足の機能を取り戻すことができることが証明されたとされる。
Constraint-Induced-Movement Therapy(束縛式―動作誘導―療法= CI Therapy)と呼ばれるこのリハビリテーションは、患者の使える方の手を束縛して、使えない方を無理矢理使わせることによって脳の部品(parts of brain)を再結線(rewire)させ、ある種の思いこみによる無力感(learned helplessness)を克服させ、手足の機能を回復させるというものである。
博士の論文発表と同時に、ニュ-ヨ-クタイムスは「画期的なリハビリが脳卒中患者の侵された手の動きを取り戻す(Rehab helps stroke victims regain most use of attacked arm)」と伝え、又CNN は「科学者たちは脳卒中患者が再び動作を回復するリハビリの技術を発見した(Researchers find rehab technique helps stroke patients regain movement)」、ABCは「脳卒中患者に新しい希望(New hope for stroke victims)」と伝えた。

世界中のマスコミがこれを一斉に取り上げたことから(日本ではほとんど報道されなかった) UABには問い合わせと治療申し込みが全世界から殺到しTaub 教授の教室はパニック状態に陥った。
アラバマ大学当局では、すでに長年にわたるボランティア患者に対する教授の研究実験を検証して良好な結果を確認していたので(動物実験は50年の歴史があったが人体に応用することが困難であった)、Tuab 教授に Clinic としての治療行為を行うことを認めた。 そこで教授のグループは、昨2001年7月Tuab Training Clinic として同大学病院内にクリニックを開設、一般の治療を開始した。
これを契機にアメリカ国内はもとより、CIセラピーの研究分野で早くから研究に取り組んでいたドイツのフリードリッヒ・シュラー大学(Freidrich Schiller University) を始めとする欧州各国、カナダなどの医療機関で治療が始められた。
残念ながらわが国では、所謂「象牙の塔」といわれる医学会の特異な体質が災いして、新しいものを積極的に取り入れることはなされず、兵庫医科大学などの一部の医療機関で実験的に実施されているに過ぎない。
最近になって、厚生労働省の諮問機関「・・・・・・・」によって、脳卒中のリハビリとして取り入れられるべき手法のランキングで最高位のランクとして認定された。
しかしながらこれが一般化するにはなお十数年かかるであろう。患者もその家族もとてもそれまで待ってはいられない。